Cucina Italiana

クチーナ・イタリアーナ(イタリアの台所)
第27号

「イタリア発祥の食文化運動・スローフード/
コテコテの田舎絶品パスタ」

はじめに



 イタリアでは、ローマのスペイン広場にマクドナルドが開店したことをきっかけに、イタリアの食文化を守るとの視点で、ファーストフードに対置したスローフード運動が始まったと言われています。
 
 伝統の食事、素朴でしっかりとした食材、有機農業、健康によいおいしいものの情報交換や、支援を行う世界的にもユニークなスローフード運動は、誰でも気兼ねなく参加して、楽しむことのできる運動として、イタリアで定着しています。
 そもそもイタリア料理は素材の味を重視するものです。食材、有機農業、健康によいものを大切にし、おいしいものを探して行くというスローフードの理念は、イタリアの食文化を色濃く反映しており、各地に特産の食材があり自慢の料理がある、食いしん坊のイタリアだからこそ生きている運動だと思います。
 第27回は、イタリア発祥の食文化運動・スローフード運動を紹介するとともに、ヤマネミドリさんが見つけたコテコテの田舎絶品パスタ、チェリッティのポルチーノとトリュフ和えをお知らせします。
 
協力者の紹介と1号から10号の刊行内容
http://www.ivc-net.co.jp/food/mailmaga/2016/publish.html
 
11号から30号の刊行予定
http://www.ivc-net.co.jp/food/mailmaga/2016/publish2.html

 

イタリア発祥の食文化運動・スローフード運動



 1989年にイタリア北部ピエモンテ州のブラ(Bra)でスローフード協会が設立されました。現在ではイタリア国内で4万人、世界各国に8万人以上の会員を有する国際組織となっています。スローフード協会には、「味の箱舟」プロジェクト、スローフードの情報交換、協会認定レストランの推奨を主な活動にしています。
 
<「味の箱舟」プロジェクト>  「味の箱舟」プロジェクトでは、大量生産による「食の均質化」という名の大洪水から、美味しい食品や食材を「味の箱舟」に乗せて守るというコンセプトで、未来の子供たちに残したい貴重な食材や食品を発掘する作業が進められています。この活動では、スローフード協会のメンバーたちが、各地で農畜産物、伝統漁法、加工食品などの調査を行い、現地のものづくりを取材した「箱舟」という雑誌を通じて、守るべき食材や食品の価値を一般やマスコミに伝えています。
 さらに味の箱舟に認定された品目のなかで、特に緊急な支援を必要とするものに対して販売方法を企画・助言し、小さな生産者や加工業者が作る伝統的な食品の市場進出を促す活動を進めています。このプロジェクトでは多様性の保護こそが飢餓問題を解決する唯一の鍵という思いが込められているとのことです。

 
<スローフードの情報交換>
 スローフード協会では、世界中の会員に送られている季刊誌「スロー」を通じて、スローフードの価値や考え方を伝える活動を進めています。また、イタリア風居酒屋であるエノテカから発展した庶民的な食堂である「オステリア」のガイド本の発行を行っています。「オステリア」では、地元のワインがそろっている一杯飲み屋や郷土料理を提供している素朴な食堂、地元の農業に密着したアグリツーリズモ、ワインセラー、郷土料理のレ ストランなどを紹介しています。
 
<協会認定レストランの推奨>
 スローフード協会では、スローフード運動の理念にあったレストランを協会認定のレストランとして推奨しています。ここでは、美味しくていろいろな味を 楽しめることを基本に、地元の食材を使っていること、それらの食材が土地の歴史や風土と結びついていること、小さな生産者によるもので限られた生産 量であること、遺伝子組み換え食品でないこと、健康に良いことなどが認定の基準となっています。
 このような基準があることから、認定を受けたレストラン は、郊外に立地する地元の食材を使った伝統的郷土料理を提供するレストランが多くなっています。しかし最近では、ローマのベジタブルレストランであるアランチャ・ブルーのように、季節ごとに採れる地元の野菜を中心に前菜から主菜までを提供する新傾向のレストランも、協会認定レストランに認定されています。

 
 スローフード協会というと何かいかめしい感じがしますが、イタリアの会員は、各地の美味しいものを探し出して味わいながらその情報を交換し合っているというのが実情のようです。言ってみればミシェランガイドに載るような高級店ではなく、誰でも気兼ねなく、経済的に楽しむことのできる地元の特色ある食材を工夫して使ったレストランや食材を紹介しあって、楽しんでいるということです。
 伝統の食事、素朴でしっかりとした食材、有機農業、健康によいものを大切にするスローフードの運動は、マンマの味が一番と考えるイタリア人にとって、あたりまえなものであり、自然に入っていける運動のようにも思えます。 そもそもイタリア料理は素材の味を重視するものです。皆さんもイタリアを訪ねられた際には、イタリアの食文化の原点である各地のスローフードレストランやその地域ならではの食材にチャレンジされては如何でしょうか?

 

Midoromaの見つけたコテコテの田舎絶品パスタ、
チェリッティのポルチーノとトリュフ和え



<チェリッティのポルチーノキノコとトリュフ和え>
 チェリッティ(CELLITTI)はうどんのように太いパスタで、卵で練上げたもの。ネットで検索しても出てこないローマ近郊の特産パスタ。ポルチーノキノコとトリュフという強烈な匂いのコンビニは負けない図太さがあります。もちろんスーパーでも売っていない、まさに地元のスローフード。ポルチーノキノコをフライパンで料理したソースとトリュフで和えた料理。お洒落ではないけど、なかなかハードで美味しいです。このパスタだけはローマ近郊の田舎町でしか出会えないものです。

 

次回予告


 次回は自分でピッツァにチャレンジされる際の参考に、ピッツァ作りのポイントとなるビール酵母のお話をします。また併せて、ピッツァの原型、古代ローマのピンサを出すお店をご案内します。
 
協力者の紹介と1号から10号の刊行内容
http://www.ivc-net.co.jp/food/mailmaga/2016/publish.html
 
11号から20号の刊行予定
http://www.ivc-net.co.jp/food/mailmaga/2016/publish2.html

 

発行


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