Cucina Italiana

クチーナ・イタリアーナ(イタリアの台所)
第34号

中世の塔の町サンジミニャーノ食材探訪ツアー/
その1ワイナリー訪問

はじめに



葡萄畑の先に広がるオリーブの木々と中世の塔

 フィレンツェ在住のフードコーディネータ中島洋子さんが、8月上旬に中世の塔の町として知られるサンジミニャーノの家族経営のワイナリーPodere la Marronaia(ポデーレ・ラ・マッロナイア)をお客様と一緒に訪れました。
 
 黒トリュフのコース料理またはサフランのコース料理の昼食を取りながら、ワイナリーで作られる4種類のオーガニックのワインの試飲をし、ローズマリーやトリュフなどで風味づけされた自家製エクストラバージンオリーブオイル各種の試食をしました。
 
 第34回はイタリアの食の原点となる食材、それに応じた料理や料理に合わせたワインといったものの奥の深さ感じていただくイタリアならではの食材探訪ツアーをご報告いたします。
 
中島洋子さんのイタリア食紀行
www.ivc-net.co.jp/food/toscana/foodlogue.html
 
トスカーナの食の体験ツアーは
www.ivc-net.co.jp/food/shokuji/tour.html
 
中島洋子さんのフィレンツェで1日だけ料理教室
www.ivc-net.co.jp/food/toscana/lesson.html
 
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ワイナリー、ポデーレ・ラ・マッロナイア/
Podere la Marronaia



ワイナリーPodere la Marronaiaの外観

 フィレンツェから車で1時間ほどの所に位置する中世の塔の町で知られるサンジミニャーノは、ピサーナ街道とフランチジェーナ街道の合流地点にあったため、9世紀から12世紀にかけて栄えました。黄金とほぼ同等の価値のあったサフランの栽培や交易で町は栄え、富の象徴として競うように高い塔を次々に町の中に建てていったのです。14世紀以降になると町はペストの蔓延や飢饉で衰退していく運命にあるのですが、当時72あった塔のうち現在でも14塔が残っています。
 
 葡萄畑やオリーブの木々の広がる丘陵の先に、今も凛としてそびえ立ついくつもの塔はサンジミニャーノ独特の景観を保っています。 特産物としては、白ワインのヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノやエクストラバージンオリーブオイル、サフランなどがあります。
 
 フィレンツェ市内のホテルから運転手付きの車でサンジミニャーノのワイナリーPodere la Marronaia(ポデーレ・ラ・マッローニア)へと向かいました。ワイナリーに着いて車から降りると、茶色い長い毛並みの大型犬とプードルを大きくしたような白い毛のトリュフ犬が私達を出迎えてくれました。このワイナリーで飼われているトリュフ犬は実際にトリュフを探す時に大活躍してくれるそうで、大切なスタッフの一員です。

 


庭を望む個室の窓からは涼風

 建物の中に入ると、すぐに予約を入れておいた2階の個室へとスタッフが案内してくれました。
 天気予報によればフィレンツェと比べてサンジミニャーノは日中の気温が3度低かったのですが、部屋の中に入ると開け放たれた窓からは涼風が入ってきて、心地よい新鮮な空気で室内は満たされていて冷房も要りません。

 


2階の個室の窓からの眺め

 私達が食事とワインの試飲をした個室からは、庭に茂る青々とした木々が見えましたが、ワイナリーの2階にはいくつもの個室があり、窓から葡萄畑やサンジミニャーノの塔が見渡せる眺めの良い部屋や長テーブルが置かれたカントリー風のキッチン付きの個室もあります。

 


個室のテーブルセッティング

 どの部屋も漆喰の白壁に木製のテーブルや家具で設えてあり、窓からは自然光と気持ちの良い風が入ってきて、プライベートな空間はまるで個人宅に招かれたような寛ぎをもたらしてくれます。テーブルの上には、パステルカラーのお皿と曇り一つない試飲用のワイングラスが並べられています。オレンジ色を帯びた黄色のお皿はサフランを、緑のお皿はオリーブオイルを連想させます。
 
 デカンタを花器に見立てて飾られていた庭の花、素朴な温もりのあるテーブルセッティングからはワイナリーのスタッフのきめ細やかな心遣いを感じます。

 


ワイナリーのスタッフのジェシカさん

 笑顔の素敵なスタッフのジェシカさんが、前菜から順にドルチェまで1品づつ出てくるコース料理と共に、白ワイン、ロゼ、赤ワイン2本の計4本のワインのボトルを1本づつ運んでくれました。
 
 ワインの度数や葡萄の品種、各ワインに合う料理などを詳しく説明しながら、ワイングラスにたっぷりとワインを注いでくれました。
 
 ワインの作り手が提唱するワインに合う地元の食材を使ったコース料理とはいかなるものかと興味がありましたが、素材の組み合わせや調理法によって変わるいく通りもの味の発見がありました。
 
 トスカーナ産の黒トリュフを使ったコースメニューやサンジミニャーノ産のサフランを使ったコースメニューを、ワイン作りに携わるスタッフの解説を聞きながら、個室でゆっくりといただくワインの試飲付きの昼食。贅沢な時が流れていきます。

 


白ワインのヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノ(右)とロゼ(左)のボトル

 このワイナリーで試飲するワインは全てオーガニックです。2000年に農園の土壌やワインの製法を有機栽培に切り替えたそうで、殺虫剤や化学肥料を使わずに作られた葡萄からできています。
 ワインの試飲は、サンジミニャーノの特産品であるよく冷えた白ワインのヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノから。2015年に収穫したヴェルナッチャ種の葡萄を100%使ったDOCGの白ワインです。フレッシュな飲み口の美味しいワインですが、アルコール度数は14%もあります。前菜のブルスケッタの盛り合わせと一緒にいただきました。
 
  2本目の試飲は4日前にボトリングしたばかりだという2015年収穫のサンジョヴェーゼ種の葡萄100%を使って作られたロゼ。夏は冷やして白ワインの代わりに飲んだり、パスタやピザの他、魚料理や肉料理にも合うそうです。ロゼはタリアテッレと共に試飲しました。
 
 ワイナリーの見学では、通常ワインの試飲だけをしたり、あるいはこのワインにはこの料理が合うという説明だけを聞いてパンに回しかけたオリーブオイルをつまみに試飲しますが、ワイナリーが提案するそれぞれのワインに適した料理が実際に運ばれてきてワインと料理の融合を味わってみることで、作り手が伝えたかったワインの良さや美味しさがより際立つ気がします。

 


黒トリュフのブルスケッタ盛り合わせ

 黒トリュフのコース料理を予約されたお客様の一人前のブルスケッタの盛り合わせです。中央には粗く刻んだ黒トリュフをたっぷりと盛ったパン、他にも黒トリュフ入りバターを塗ってアンチョビを乗せたパン、白トリュフで風味づけしたエクストラバージンオリーブオイルをまわしかけたパン、トリュフ風味のレバーパテを塗ったパンなどが盛り付けられて出てきました。
 
 蓋をあけてパンに塗るだけのワインのおつまみに便利な瓶詰めの黒トリュフの製品は、このワイナリーで購入することもできます。

 


サフランのブルスケッタ盛り合わせ

 サフランのコース料理を予約されたお客様は、サフランの黄色い色も鮮やかなブルスケッタの盛り合わせから始まります。白いんげん豆をサフランで煮込んだもの、サフランを入れてオリーブオイルで炒めたズッキーニとパプリカを乗せたパン、カルチョーフィのパテを塗った上にかけた黄色いサフランのソース、サフランで風味づけしたエクストラバージンオリーブオイルをまわしかけたパン。二人前のブルスケッタが丸い木のまな板に溢れんばかりに盛り付けられて出てきました。
 
 イタリア料理でサフランを使った料理といえば、ミラノ風リゾットが筆頭に挙げられますが、サンジミニャーノ産のサフランを使ったワイナリーの料理は素朴でありながらも斬新的で、素材を生かした味の多様性がありました。

 


黒トリュフと松の実のタリアテッレ

 前菜の次に運ばれてきたのは第一の皿のパスタ料理、タリアテッレです。
 
 黒トリュフコースのお客様は、黒トリュフと細かく刻んだ松の実をオリーブオイルで和えたシンプルでありながらも味わい深いソースで和えたタリアテッレが出てきました。黒トリュフだけでパスタを和えるよりも、松の実が入ることで食感にアクセントが出てこくのある一品に仕上がっています。

 


サフラン風味の夏野菜の炒め物で和えたタリアテッレ

 サフランコースのお客様の第一の皿は、ズッキーニや赤と黄のパプリカをサフランで風味づけしてオリーブオイルで炒めたタリアテッレが、皆さんで取り分けて食べていただけるようにと、深めの器に何度もおかわりができるほどたっぷりと盛り付けられて出てきました。
 
 前菜のブルスケッタにもトッピングとして使われていた具ですが、パンに乗せるだけでなく、サフランで風味づけした夏野菜の炒めものをパスタソースとしてタリアテッレと和えた料理も美味しかったです。赤、黄、緑の野菜の色が綺麗で、主張しすぎないサフランの隠し味が効いた一皿は、ロゼとの相性も抜群でした。

 


黒トリュフのスライスを乗せた目玉焼きとポテトの付け合わせ

 ワインの試飲は、DOCGのキアンティ・コッリ・セネージの赤ワインに切り替わり、フランス製の樽で熟成させたガッロネ―ロのマークの付きのDOCGのキアンティ クラシコへと続きます。生の黒トリュフを厚めにスライスして目玉焼きに乗せた卵料理と茹でたポテトの付け合わせが運ばれてきました。お皿にはモデナ産のバルサミコ酢がデコレーションされています。
 
 エクストラバージンオリーブオイルの試食という観点から、この料理の凄いところは意図して薄味で塩ゆでしただけのポテトが添えられていたことです。テーブルの隅には座席に着いたときからローズマリーやトリュフやガーリックなどで風味づけをしたエクストラバージンオリーブオイルの瓶が並べて置かれていたのですが、ここで初めてエクストラバージンオリーブオイルの試食になります。
 
 エクストラバージンオリーブオイルの蓋をあけて自由にパンや付け合わせのポテトにかけて試食するスタイルです。ガーリック風味、赤唐辛子風味、ローズマリー風味、トリュフ風味と順に茹でたポテトに回しかけて試食していくと、それぞれのエクストラバージンオリーブオイルの風味が際立ってよくわかります。
 
 このワイナリーではモデナ産の8年物、12年物のバルサミコ酢も取り扱っていて、コース料理に使う他、バルサミコ酢だけをスプーンに注いで自由に試食できるようになっていました。

 


サラミ盛り合わせ

 黒トリュフのコース料理もサフランのコース料理も第二の皿は卵料理と付け合わせですが、お客様のご希望を取り入れてもらい、卵料理の代わりに地元のサラミの盛り合わせとペコリーノチーズの盛り合わせに変更してもらいました。
 
 どのお皿も惜しげなくたっぷりと盛り付けられて運ばれてきます。カポコッロ、トスカーナ産の生ハム、フィノッキオーナのサラミ類の盛り合わせは、サンジョヴェーゼ種の葡萄を90%とカナイオーロ種の葡萄を10%を使って作られたタンニンの強い味わい深い赤ワインととてもよく合います。

 


ペコリーノチーズ盛り合わせ

 羊のミルクから作るペコリーノチーズには、蜂蜜と青林檎のスライスが添えられて出てきました。色の薄いものから色の濃いチーズまで熟成度合いの違うペコリーノチーズ3種類が盛り付けられていました。フレッシュなペコリーノチーズは青林檎の酸味と相性が良く、熟成が進んだペコリーノチーズには蜂蜜をかけると美味しさが一段と引き立ちます。

 


ドルチェにはジェラートのカントゥッチ添えとヴィンサントの試飲

 コース料理の最後には、生クリームベースのフィオーリ・ディ・ラッテと呼ばれるジェラートにアーモンド入りの固焼きビスケットが二つ添えられて出てきました。食事の締めくくりの試飲は、甘口の琥珀色のヴィンサントです。ヴィンサントはイタリアのデザート・ワイン。 「聖なるワイン」と呼ばれ、 トスカーナ地方の代表的な食後酒です。トスカーナ名物の固焼きビスケットであるカントゥッチをヴィンサントに浸しながらいただきました。

 


白ワイン用のヴェルナッチャ種の葡萄畑

 お食事の後は、試飲して美味しかったワインやエクストラバージンオリーブオイルなどのお買い物もしていただけます。この農園ではオーガニックのワインやエクストラバージンオリーブオイル、モデナ産のバルサミコ酢の海外発送もしています。日本に戻られてから、イタリア旅行を振り返りつつ開けるワインのボトルはまた格別なのではないでしょうか。
 
 お腹も一杯になったところで、ワイナリーのスタッフのジェシカさんが葡萄畑を案内してくれました。なだらかな丘陵に沿って葡萄の木が整然と植えられ、その奥にはオリーブの木々が広がっています。その先に見えるのはサンジミニャーノの中世の塔で、どこから撮影しても絵葉書になりそうな美しい景観です。

 


ヴェルナッチャ種の葡萄

 葡萄の棚に近づいて葉をかき分けると、ヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノの白ワインを作る為のヴェルナッチャ種の葡萄がたわわに実っていました。 お客様が葡萄の粒を一粒食べてみても良いかどうか質問されたので、ジェシカさんに聞くとどうぞ味見してみて下さいとのこと。白ワインになる前の収穫にはまだ少し早い甘酸っぱい葡萄を味見する稀な体験もワイナリーを訪れる醍醐味の一つです。今年は豊作で、今からワイン作りが楽しみだと嬉しそうに話してくれたジェシカさんでした。

 

次回予告


 次回は引続き近くにある世界遺産に登録された塔の街サンジミニャーノを中島さんと散策します。
 
協力者の紹介と1号から10号の刊行内容
http://www.ivc-net.co.jp/food/mailmaga/2016/publish.html
 
11号から30号の刊行予定
http://www.ivc-net.co.jp/food/mailmaga/2016/publish2.html
 
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