イタリアの食材

 イタリア人は美味しいものが大好きです。料理では素材の味を引き出すことを重視します。この背景にはその地域ならではの、豊富な食材にあります。温暖な気候のイタリアでは北はアルプスの麓から、南はアフリカ大陸に近いシチリア島まで変化に富んだ海と山、平野で構成されたおり、地域ごとに独特の農畜産物、魚介類、野禽類、加工食品等、多種多様の食材があります。そして春にアンティチョーク、空豆、夏にイチジク、秋にトリュフやポルチーニキノコ、晩秋から冬にかけてはイノシシ、野鴨、野兎、鹿などのジビエといった季節ごとの食材があります。この食材を背景にイタリア各地では、その地方のおいしい料理が開発されます。

 例えば、豚の塩漬け肉は日本ではベーコン、ロースハム、ボンレスハムが一般的です。しかしイタリアでは、豚の塩漬け肉はベーコンやハムだけでなく、プロシュート(生ハム)、パンチェッタ(バラ肉)、グアンチャーレ(ほほ肉)、ラルド(豚の背脂)、クラテッロ(熟成させた尻肉)、コッパ(後頭部位)等があります。例えばローマ地方では、カルボナーラ・スパゲッティやリガトーニ・アマトリチャーナには、ベーコンでなく羊のペコリーノチーズに合わせて、パンチェッタやグアンチャーレが使われます。トスカーナのラルドは大理石の切り出し職人達が保存食として開発したものです。コッパやクラテッロはそれぞれの地方で育った豚から作った生ハムとして開発されました。このほかにもナポリでピッツァに使うソースはサンマルツァーノ・トマトであるとか、ボローニャのラザニアには必ずパルメザンチーズを使うといったように、地元の食材にこだわった料理が開発されています。

イタリアの食材の基準 イタリアのトマトの種類 イタリアの国民食パスタ

<地域ごとの食材>
 おもな食材を地域ごとに並べると次のようです。なおD.O.P.(Denominazione di Origine Protetta)食材とはイタリアで国から品質保証された優良食材です。

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北部(ミラノ、トリノ、ヴェネチア):  山岳地帯が近いことから、保存食品も多い地域です。
 
サラミ・ソーセージ、ソプレッサ・ソーセージ(写真右)、サンダニエーレ産生ハム、ラルド(豚の背脂の塩漬け肉)、グラナパダーノ・チーズ、ゴルゴンゾーラ・チーズ、バジリコ・ジェノベーゼ、ヴァルディノン産リンゴ、サン・ゼーノ産栗(以上、DOP食材)
 
マスカルポーネ・チーズ、白トリュフ、ポルチーニ茸、ラディッキオ・トレヴィーゾ(チコリの1種)、ホワイトアスパラガス、ポレンタ(細挽きのとうもろこしの粉を練ったもの)、アドリア海のシーフード
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中部(フィレンツェ、パルマ、ボローニャ):  内陸地帯を中心に発展していることから、加工肉や山の幸が多く、モデナのバルサミコ酢はイタリア一との評価を得ています。
 
パンチェッタ(豚バラの塩漬け肉)、クラテッロ(豚のもも肉の塩漬け肉)、チンタ・セネーゼ豚肉、コッパ(豚の後頭部位の塩漬け肉)、パルマ産プロシュート、トスカーナ産プロシュート、モデナ産プロシュート、パルメザンチーズ、アンティチョーク、カプレーゼ・ミケランジェッロ栗、サフラン、バルサミコ酢、オリーブオイル(以上、DOP食材)
 
ボローニャ・ソーセージ、ラルド(豚の背脂の塩漬け肉)、ジビエ、ポルチーニ茸(写真右)、トリュフ、コストルート・トマト
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ローマと周辺:  古代ローマ時代からローマでは羊肉を常食しており、羊に関する食材が豊富。ハーブ類、青野菜も豊富です。
 
ペコリーノチーズ(羊乳チーズ)、リコッタチーズ(羊乳チーズ、水牛乳チーズ)、インゲン、スペルト小麦、サフラン、ヘーゼルナッツ、オリーブオイル(以上、DOP食材)
 
羊肉、アンティチョーク(写真右)、プンタレッラ(チコリの一種の青野菜)、ルッコラ、アスパラガス
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南部(ナポリ、プーリア、シチリア):  温暖な気候で農業が発達しておりイタリアの食物庫ともいわれています。DOPに登録されている約40のオリーブオイルのうち半数がこの地域のもので、オリーブ王国とも言えます。
 
オリーブ、オリーブオイル、モッツァレーラチーズ、リコッタチーズ(羊乳チーズ、水牛乳チーズ)、ブッラータ・チーズ(ミルク入りモッツァレーラチーズ)サンマルツァーノ・トマト、ピエンノーロ・トマト、オレンジ、サクランボ、白イチジク、ピスタチオ
 
スカモルツァ・チーズ(燻製して食べられるチーズ)、アマルフィー海岸のレモン、アグリジェントのブドウ、地中海マグロ、イワシ、アーモンド、シチリアの塩、粗塩、乾燥パッキーノトマト

海鮮ラビオリ

<共通する特長、パスタとトマトソース、オリーブオイル>
 地域ごとに豊富な食材があるイタリアの料理にも、全体を通した特徴があります。その一つは、イタリア料理全般に欠かすことのできない料理のベースとなるトマトソースとオリーブオイルです。オリーブオイルはサラダのドレッシングなどにも用いられ、味を引き出すのに役立てられています。
 
 もう一つの共通性はナポリ生まれのパスタです。パスタのことを簡単に言うと、パスタはデュラム小麦粉を練って麺状にしたものとなります。麺状になっていても、スパゲッティのような長いロングパスタとマカロニのようなショートパスタがあります。麺状のパスタは北部に行くにつれタリアテッレのような平打ち麺が多くなっているようです。さらに詰め物入りのラビオリやトルテッリーニ、板状になったラビオリ、団子状のニョッキ、北アフリカ起源の粒状のクスクスなどもパスタになります。イタリアの食事のコースでは、パスタは前菜に続く第一の皿(プリモピアット)として食べられています。600種類以上あり、今でも毎年新しいものが開発されています。全土で食べられているスパゲッティを除くおもなパスタを地域ごとに並べると次のようです。これを見るとナポリからイタリア各地に広がっている傾向が見えます。

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北部のパスタ(ミラノ、トリノ、ヴェネチア):
 タリアテッレ(平麺、写真右)、ペンネッテ(ペンのように斜めに切られた筒状のパスタ・ペンネの小型版)、タヤリン(卵入り手打ちパスタ)
 
中部のパスタ(フィレンツェ、パルマ、ボローニャ):
 フィットチーニ(平麺)、トルテリーニ(肉詰めパスタ)、パッパルデッレ(幅広平麺)ラビオリ(四角い肉詰めパスタ)
 
ローマと周辺のパスタ:
 リガトーニ(マカロニ状のショートパスタ)、チェリッティ(うどん状のロングパスタ)
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ナポリのパスタ:
 マカロニ、パッケリ(大型マカロニ)、リガトーニ(マカロニ状の大型ショートパスタ)、トルティニオーリ(リガトーニ状の小型パスタ)、リングイネ(楕円状のロングパスタ)、ニョッキ(団子状のパスタ)、ラザニア(板状パスタ)
 
南部・シチリアのパスタ:
 オレキエッティ(耳たぶ状のパスタ)、カサレッチェ(S時型のショートパスタ)、クスクス(粒状パスタ)、ブシアーテ(コイル状パスタ、写真右)