ナポリピッツァを説明し尽くす教本

 冒頭の写真は、T.T.さんが持ち帰った「La Pizza Napoletana ナポリピッツァ 職人技の化学分析など」という大変大仰な教本です。この教本はナポリの名人ピッツァ職人(マスターピッツァイオーロ)のエンツォ・コッチャさんがナポリ大学の農学部と共同でまとめられた本です。
 
 この本は現地で非常なセンセーションを引き起こしています。なぜならこれまで職人のレベルに止まっていたナポリピッツァのおいしさを、分子や空気、水分の組合わせ等により具体的に示したものだからです。つまりナポリの職人技がどのように美味しさにつかがっているか、明らかにしたものなのです。



教本の内容
 
 中身を見てみますと、その内容はピッツァコンサルティングのプロ養成コースで最初の5日間に、ナポリ大学の農学部の先生から叩き込まれる内容だったのです。ですから我々関係者にとってはある意味で普通のものでした。(右写真はグルテン形成の模式図)
 
 でもベテランシェフに言わせると、このように化学式で料理のおいしさ、職人技を説明した本はないとのことです。最初の5日間で、大学の先生からこの話を聞いた日本人ベテランシェフは面食らってしまったとのことでした。しかしこの種の本の有用性、つまりに科学による職人技を証明することの必要性に気付いたベテランシェフは、日本の後輩に教えたくて、持ち帰ったとのことです。

デンプンのグルコース結合したアルファ1.4およびアルファ1.6



様々な画像
 この本ではおよそ全体の約1/3がこのような科学的分析をした内容になっています。走査型電子顕微鏡で撮影した画像も多用されています。
 ある意味、職人さん達にとって非常に馴染みの無い世界です。しかしこのことを修得すると、飛躍的にナポリピッツァのレベルが向上します。いわば食の文明開化とも言えるでしょう。従来の職人技では考えられなかった世界が広がるという訳です。

 



ナポリピッツァ作りの各工程の解説
 
 残りの2/3が、エンツォ・コッチャさんが、ナポリピッツァの各工程を詳細に解説する部分となっています。もちろん残りの2/3さえできれば、ピッツァイオーロとして十分なのですが、しかし前半の1/3が重要であることに変わりはありません。
 
 昔気質の職人さん達は、この本の内容が講義される授業には戸惑われます。でも実技に入ると元気を取り戻して生き生きとされます。とくにこの本を持ち帰った日本人ベテランシェフの方は日本でピッツァを教えていましたので飲み込みは早かったです。