アグリツーリズモでのワイン用葡萄の収穫体験 (2000年10月5日)



秋晴れの日にトスカーナ地方の美しい自然の中で葡萄狩りがしてみたい、というのが私のかつてからの願いでした。そんな折、イタリア人のテラコッタ会社のオーナーの弟が所有するアグリツーリズモで葡萄の収穫をするという話が舞い込んできました。それも、上質のD.O.C.G.を産出するキアンティ・クラッシコの産地です。当日は、気持ちの良い秋晴れ。一週間前にアフリカ旅行から帰ってきたばかりというオーナーは、多くの貸家をイタリア国内に所有している億万長者ということ。初対面で、会う前は少々緊張していましたが、見た目も話し方も素朴でとても感じの良いおじ様だった。
さて、待ち合わせの町に車で着くと、白いジープに乗ったオーナーがすでに私達を待っていた。オリーブ畑や葡萄畑の広がるトスカーナの絵のように美しい丘陵地帯を縫い、白いジープは私達の車の先頭を切って道案内します。黒い雄鳥のマーク、ガッロ・ネーロの標識を通過し、ようやくキアンティ・クラッシコの中心地にあるアグリツーリズモに到着しました。オーナーの弟の経営するアグリツーリズモは、石作りの昔の農家風の外観で、辺りの自然と素焼きのテラコッタが見事に調和されていた。プールへと続く芝生の小道に配置されたいくつものキノコの形のテラコッタのオブジェは、夜になって辺りが薄暗くなると電灯に早や代わりします。

 持ってきた長靴に履き替え準備が整うと、オーナーから鋏を渡されて広大な葡萄農園へと案内されました。葡萄農園では、元気のよさそうなおじいさんとおばあさん十数人が葡萄の収穫作業をしていて、挨拶をすませ、いよいよワイン用葡萄の収穫の始まりです。ワイヤーにしっかりと絡みついた葡萄の蔓の至る所に、ずっしりと重い葡萄の房が垂れ下がっています。私は葡萄の房を左手に持ち、その重みに感激しながら生まれて始めて葡萄を刈り取りました。摘めども摘めどもある。上にも下にも。葉に隠れて束になって実っているのもある。しゃがんだり、立ったりしながら積み残しのないように葡萄を刈り取っていく。ただし、干からびてしまった葡萄や傷んでカビの生えているような葡萄は摘まないように注意が必要です。人の手を使い、こうして選別しながら良い葡萄だけを摘んでいくからこそ、おいしいキアンティ・クラッシコの赤ワインが出来るのでしょう。<


 サンジョヴェーゼ種の葡萄の房を切り取り、赤いプラスチックのケースに入れていくと5メートルも進まないうちに 籠の中は葡萄で一杯になる。汗ばんだ額をタオルで拭いながらホット一息ついて上から眺めると、なだらかな斜面に広がる葡萄畑のあぜ道にぽつりぽつりと赤いプラスチックのケースが並んでいて綺麗です。頃合を見計らってトラクターが収穫した葡萄の入ったケースを回収していきます。




 昼ご飯時になると、私達は定年退職のおじいさん、おばあさんと一緒にトラクターの荷台に乗り込み葡萄畑の上にあるアグリツーリズモへと向かった。長テーブルに全員が着席すると、85歳のイタリア人のおばあさんが用意してくれた昼食を皆で食べた。メニューは、ウサギと牛肉のから揚げ。タリアッテッレのラグーソース和え。グリーンピースとパンチェッタの付け合せ。ポテトのフライ。トスカーナパンと葡萄が散りばめられたスキアッチャータ(写真左)は収穫を手伝うおじいさんが自分の家の釜戸で焼いてきたそうだ。スキアッチャータにはこのアグリツーリズモの葡萄畑で収穫したというサンジョヴェーゼの葡萄が使われていて実においしかった。素朴だけれど質の良い暮らしがここにはあります。自家製のD.O.C.G.のキアンティ・クラッシコを2杯、グラッパというアルコール度の高い食後酒を2杯、ヴィン・サントという甘い食後酒をコップに8分目と、注がれるまま飲んですっかりほろ酔い加減です。ゆったりとしたペースでおいしいイタリア料理をお腹一杯食べて2時間の昼食を終えてから、私達は午後の収穫をする為に葡萄畑へと向かいました。


一足先に収穫作業を切り上げた私達は、アグリツーリズモのワイン倉に案内してもらい、高さ2メートルはあるであろう巨大な樽に立てかけられた梯子を登って仕込んだ葡萄の様子を上から覗かせてもらいました。今日私が収穫した葡萄もこの樽の中でおいしい赤ワインへと熟成し、やがてD.O.C.G<キアンティ・クラッシコ>として市場に出回るのだと思うと感無量です。

こうして私の夢だった『秋晴れの日の葡萄狩り』はキアンティ・クラッシコの土地で見事に現実のも のとなり、収穫の喜びをイタリア人と共に分かち合い、心からの充足感を得ることができたのです。


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