Cucina Italiana
クチーナ・イタリアーナ(イタリアの台所)
第197号
ナポリピッツァを説明し尽くす教本
はじめに
冒頭の写真は、Tさんがイタリアから持ち帰った「La Pizza Napoletana ナポリピッツァ-職人技の化学分析など」という大変大仰な教本の日本語版です。この教本はナポリの名人ピッツァ職人(マスターピッツァイオーロ)のエンツォ・コッチャさんがナポリ大学の農学部と共同でまとめられた本です。
この本は現地で非常なセンセーションを引き起こしています。なぜならこれまで職人のレベルに止まっていたナポリピッツァのおいしさを、分子や空気、水分の組合わせ等により具体的に示したものだからです。つまりナポリの職人技がどのように美味しさにつながっているか、明らかにしたものなのです。
寡聞ながら日本でもこのような本を見たことがありません。Tさんすごい本を持ち帰ったのです。しかもこの教本の日本語版が2020年の1月に発行されることになりました。
ナポリピッツァを説明尽くす教本→こちらから
教本の日本語版カタログは→こちらから
教本の目次は→こちらから
イタリアの台所ウェブ版
→https://www.ivc-net.co.jp/cucina/index.html
教本の内容
グルテン形成の模式図
Tさんが持ち帰った本、すごい本なのですが、中身を見てみますと、その内容はピッツァコンサルティングのプロ養成コースで最初の5日間に、ナポリ大学の農学部の先生から叩き込まれる内容だったのです。ですから我々関係者にとってはある意味で普通のものでした。
でもベテランシェフのTさんに言わせると、このように化学式で料理のおいしさ、職人技を説明した本はないとのことです。最初の5日間で、大学の先生からこの話を聞いたTさんは面食らってしまったとのことでした。しかしこの種の本の有用性、つまりに科学による職人技を証明することに気付いたTさんは、日本の後輩に教えたくて、持ち帰ったとのことです。
デンプンのグルコース結合したアルファ1,4およびアルファ1,6
様々な画像
走査型電子顕微鏡で撮影した画像
この本ではおよそ全体の約1/3がこのような科学的分析をした内容になっています。走査型電子顕微鏡で撮影した画像も多用されています。
ある意味、職人さん達にとって非常に馴染みの無い世界です。しかしこのことを修得すると、飛躍的にナポリピッツァのレベルが向上します。いわば食の文明開化とも言えるでしょう。従来の職人技では考えられなかった世界が広がるという訳です。
小麦グリアジンの酸性pHを有するポリアクリルアミドゲル(A-PAGE)
ナポリピッツァ作りの各工程の解説
残りの2/3が、エンツォ・コッチャさんが、ナポリピッツァの各工程を詳細に解説する部分となっています。もちろん残りの2/3さえできれば、ピッツァイオーロとして十分なのですが、しかし前半の1/3が重要であることに変わりはありません。
Tさんのような昔気質の職人さん達は、座学のある最初2週間の授業には戸惑われます。でも実技に入ると元気を取り戻して生き生きとされます。とくにTさんは日本ではピッツァを教えていましたので飲み込みは早かったです。
それでも時には日本流が顔を出してしまい、講師のダヴィデさんから叱られていました。このような面でも、受講者の一人だった「ダ・マサニエッロ」の小松さんは理解力が抜きん出ていたことが判ります。
講師のダヴィデさんとTさん
「La Pizza Napoletana ナポリピッツァ―職人技の化学分析など」という教本はイタリアでは25ユーロで販売しております。洋書を扱う本屋さんやAMAZONなどから取寄せることも可能です。
「La Pizza Napoletana ナポリピッツァ―職人技の化学分析など」の日本語版が2020年1月末に発刊されます。この翻訳はこの授業の日本語通訳をいつもお願いしているナポリ在住の鈴木庸子さんが翻訳を担当されています。こちらも是非ご覧ください。
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次回予告
スーパーに押されて昔ながらのパスタ屋さんが店仕舞いをしていた時期もありましたが、パスタ屋さんが復活しています。次回はルッカ旧市街のメインストリートにある生パスタ屋さんの紹介です。
日本人ピッツァイオーロ→こちらから
ウェブ版イタリアの台所→
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