「食文化としてのナポリピッツァ」
9.重要な設備の薪釜、10.ピッツァ社長のこだわり、11.日本でのピッツァ作り

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9.重要な設備の薪釜
 また、ピッツァを焼くのに必須なピッツァ窯にも、決まりがあります。代表的なナポリの薪釜の特徴は炉内部の温度が 450°C近くになり(最高温度は470°C)、ナポリピッツァを焼く上で非常に重要な役割を果たします。構造的には、外枠や土台は耐火煉瓦、内部は岩土・ガラス 片などを耐火セメントで固め、その上に耐火 煉瓦でドームを造りその間にはソレント半島の海岸の砂を入れて層を作ります。さらに 薪の高熱からの劣化を守る為に塩の層を重ねています。炉床部分にもソレントの粘土を用いる事でやわらかく、耐久性のある炉床を可能にしています。

 この機能がなぜナポリピッツァに必要なのかというと、以下の3つポイントがあります。
1. 薪がおきになり炉床に熱を伝えます。この熱伝導により生地の下を焼き上げます
2. 炉内の対流熱により具材を焼き上げます
3. 輻射熱、薪の遠赤外線により生地の周りの縁の部分をもっちりと焼き上げます
 この機能があって美味しいナポリピッツァが焼き上がるのです。最近はガス窯・電気窯の性能も良くなり薪釜により近づいていますが、ガス釜では炉床への熱伝導が弱く、電気釜では、遠赤外線による輻射熱が弱くなります。それぞれを補うために、ガス・電気の併用窯も最近は出てきています。見た目は同じでも焼き上がったピッツァの中身は熱源により大きく変わります。



10.ピッツァチェーン社長のこだわり
 
 日本で人気のある、あるピッツァチェーンは、社長がナポリ生まれのイタリア人ということで、お店の設備やピッツァ作りにはこだわりを持っていらっしゃいます。日本にはピッツァ釜の業者は沢山いるのですが、ナポリの業者を使うだけでなく、対流設備に費用をかける等されています。炉床も輻射熱を考慮して緩衝剤が入れられています。薪はブナを使っているとのことです。ピッツァ釜はナポリのピッツァスクールのものと同じぐらいの大きさのものが1店舗に2台設置されているとのことでした。

 食材も水牛のモッツァレッラを使います(日本では牛乳のモッツァレッラを使うことが多い)。ソースのベースとなるトマトもサンマルツァーノ種をナポリ近郊の有機栽培グループと契約して空輸しています。日本では通常トマト缶詰を使っていますので、並大抵のこだわりではありません。このチェーンでも悩みを持たれています。簡単に言ってしまえば、経験豊富なピッツァ職人が少ないということです。育てようとしても簡単には育たないそうです。



11.日本でピッツァ作りをするにあたって
 イタリア料理はトマトソース、オリーブオイル、小麦粉と言うベースがあります。しかしその最大の特徴は、その土地の食材を最大限に生かしたものです。素材の味を最大限引き出すものです。ですから日本で作るピッツァも、わざわざすべての食材をイタリアから取寄せる必要は無く、日本の美味しい食材を使うものでも構いません。イタリアではスーパーで売っている生のビール酵母も、日本では手に入りにくいので、イーストを代替にして構いません。粉にはグルテンフリーのものを使うのもアリですし、それこそ粉に米粉を使うこともアリだと思います。

 ただそのことの前提となるピッツァ作りの基本は学ぶ必要があります。料理は手作業ですので経験がものを言いますが、その決まり事は知らなければならないということです。もちろんピッツァスクールで学んだと言って基本は学べても、経験まで修得できるものではありません。どこで経験が生かされているかは、身をもって体験しなければなりません。つまりピッツァスクールでは、経験を積む入口に立てるということです。
 
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