「食文化としてのナポリピッツァ」
3.伝統継承のピッツァスクール、4.名人の考え方

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3.伝統を受け継ぎ、次の世代を育てるピッツァスクール・ピッツァコンサルティング
 ピッツァスクールを主宰するエンツォ・コッチャさんは10人にもみたないマスターピッツァイオーロの一人です。ナポリのソウルフードの伝統を受け継ぎ、次の世代につなげるためにピッツァスクールを開設され、ピッツァの発展に努力しているマスタークラス(名人)の方です。名人クラスで、伝統の継承のために活躍されている数少ない方です。このようなことから、世界無形文化遺産以降、ナポリピッツァの伝統の継承を計るピッツァスクールにはマスコミの取材が頻繁に訪れています。
 
 2018年3月12日も国営放送が授業風景を撮影しており、ちょうど受講されていた日本人料理人の方もテレビ出演して、宿に戻ってから夜の番組で自分の姿をご覧になったとのことでした。

 ナポリで育まれてきたピッツァは、他のイタリア料理と同様にイタリア料理の一部です。すなわちイタリア料理に共通する、小麦粉、トマトソース、オリーブオイルを使うことを基本としています。食材には地元で取れる厳選したものを使います。ピッツァスクールでは、なぜこのようなことが必要なのか、徹底的に授業で叩き込まれます。なんとピッツァスクールではナポリの大学の農学部の先生から、美味しさの理論根拠を明らかにするために食材の成分と熟成、加熱に関する化学変化の効果等の講義までおこなわれています。
 
 エンツォ・コッチャさんは、世界的に親しまれるようになったナポリピッツァが、世界各地で発展して愛されるようになることを願っています。もともと他のイタリア料理と同様に、ピッツァもその地域の食材を使って、より美味しくいただくものだと思っているのです。

 そのためにもピッツァ作りの基本は知って欲しいと考えているからです。このようなことから国際展開に熱心で、特に最近は新興国のウクライナに訪問して指導する機会が増えています。この姿勢を反映して、ピッツァスクールの受講生もイタリア人よりは外国人が多くなっており、日本をはじめとしてアメリカ、イギリス、韓国などの受講者が増えています。


 


4.ピッツァ名人エンツォ・コッチャさんの考え方の基本
 ナポリ人の作るピッツァは実際に美味しいのです。このことは同じイタリア人でもナポリ人はピッツァ作りが身に付いてしまっているのだと思います。おそらく生地作り(それも粉の配合や発酵のさせ方)、焼き方(熱の加え方)が違うような気がします。
 しかし、職人の段階はナポリ人が身につけているピッツァ作りのさらに一段上となります。その違いは、よりピッツァを美味しく作るために食材のみならず、作業や工程、設備にまで細かなこだわりをプロの職人は持っているのです。もちろんこれはピッツァイオーロなら誰でも理解している部分です。これに経験やカンが加わってピッツァイオーロが誕生します。

 さらにその日の温度や湿度、作る環境、食材などの条件に合わせて、最高のピッツァを作るのがピッツァ名人・マスターピッツァイオーロということになります。
 エンツォ・コッチャさんはこのような職人の技巧を踏まえて、伝統の継承を計ります。これがエンツォ・コッチャさんの伝統を守るだけでなく発展させるためのスタイルとなっています。
 
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