地下鉄ピィラミッド駅とトラステベレ駅の間のMattatoiにある「ペコリーノ(羊の肉)」の扉を開けると、日本の定食屋のおばさんのようなイタリア人の人なつこい笑顔に迎えられて、ヨソモノの不安が吹き飛んでしまいます。
●料理人のオバさんとオジさん
イタリア料理には貴族の食べる高級なものと庶民の食べる料理の系譜があります。高級なものはイタリアの王女がフランス・ブルボン家に嫁ぐ際にフランスに伝えられ、フランス料理の源流の一つとなりました。その一方で、肉等を満足に食べることの出来なかった食いしん坊の庶民は、お腹の一杯になるパスタ料理を考案した事は有名な話です。ローマの伝統的家庭料理の臓物料理も、庶民の料理、マンマの味、貴族が見向きもしない残り物の臓物やしっぽ、はては頭を美味しくいただくものです。
イタリアでレストランへの最高の賞賛は「家で食べるようにおいしい」です。「ペコリーノ」の料理はまさにその言葉を実行しているわけです。
●Mattatoi(屠殺場)の由来
ピィラミッド駅とトラステベレ駅の間のこの場所は、ローマに食肉を供給する屠殺場がありました。東京築地の周りにいろいろレストランができたように、屠殺場で出る端肉や臓物や尻尾や頭を使って屠殺場に勤務する人たちに食事を提供する店ができてそのうちの一つがこのレストランです。
リソルジメント(イタリアの統一)が達成された1800年代の終わりごろから、ここには労働者向けに食事を提供する店、それこそメニューのイラストにあるように、机と椅子だけの屋台のような店が始まりだったようです。最近は、ローマ伝統料理を高級にした高級レストランが多くなっていますが。ペコリーノは「伝統」を守る庶民の店です。
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